第7章 だから恐怖を嫌った 乱凪沙
目が覚めると凪沙さんが目の前にいた。私の手を握りしめていた。
私の意識が戻ったことに気づいた彼は、離れようとした。
が。
私は彼に抱きついた。
「凪沙さん…………………。凪沙、さん。凪沙さん。凪沙さん、凪沙さん。」
泣きじゃくりながら狂ったように彼の名前を呼んでしがみついた。
彼は戸惑い、どうしたのと言いながら私の背中をソッとさすった。
「もう………二度と会えないと思っちゃった…」
決して夢から戻ってこない、彼のように。
留守電をした後、そのまま寝ていた。
夢を見たときから彼がいるのはわかっていた。
「………ごめん。」
彼は大きな体で私を抱き締め返した。
「………本当に、迷ったんだ。でも……さんが心配になって、帰ってきた。」
「…………………」
「………もう大丈夫?夢は怖くない?」
私は黙ってうなずいた。彼は良かったと言った。
「………亡くなった人って、お付き合いしてたの?」
「ううん。友達。訳あって一緒に住んでたけど。」
「………何それ、気になる。」
「男女の友情だよ。」
「………信じられない」
どこか拗ねたように声を低くした。
私は彼の腕の中が居心地よくて、ずっとくっついていた。
出会って、二年と一ヶ月。
私達は、付き合っていない。
でも一緒に住んでいる。
そして、寄り添い合っている。
それで十分だ。
「………ねぇ」
「何?」
「………気が向いたら、付き合わない?」
凪沙さんがそう言った。
私は、少し微笑んだ。
「考えておくよ」