第7章 だから恐怖を嫌った 乱凪沙
___もしもあなたが他の誰かと私を重ねているのなら、それは私を拒む理由にはならない
私は今朝言われたことに頭を悩ませていた。その言葉は仕事中も暗示のように流れていた。
凪沙さんが初めて本音を言った気がした。
「……………………………………」
寝るときだって、その言葉は聞こえてくる。
私はベッドに入らず缶コーヒーを飲んでいた。
気休めくらいにはなるだろう。
夢を見るなら、眠らなければ良いんだ。
「………寝ないの?」
部屋の明かりに気づいたのか、もう寝る直前という凪沙さんが入ってきて聞いてきた。
「うん、まだね」
私は欠伸もしないで本に目を落とした。
「………今朝は、ごめんね。」
凪沙さんは私の部屋の入り口から動かずに言った。近づくと私が怒ることは、嫌になるほどわかってるはずだ。
「別に。でも凪沙さんの本音だろうなって思った。」
「………言うべきじゃなかった。」
「なぜ?言いたいことは言えば良い。」
「………あなたを、傷つけた気がして。」
私は本から顔をあげた。
『お前なんかいなければ良かったのに』
____痛い
「…私を…傷つけるのは言葉じゃないよ、凪沙さん」
「………じゃあどうしていつも夢にうなされているの?」
____辛い
「夢は抵抗ができない。わかるでしょ?」
「………何に?何にはむかうの?」
「……………………それ…は…」
____ごめんなさい
____ごめんなさい
____お願い、許して
____ごめんなさい、何もできなくて
「…………夢は、現実と変わらないよ。」