第6章 これが最後 天祥院英智
手紙が届かないことも、届けられないこともあった。お互い病人なんだからしょうがないけれど。
具合が悪い日は本当にペンさえ持てない。
「………あと、何日ですか」
ある日私は手紙を届けてくれる看護師さんに聞いた。ためらうその人に、私は言った。
「もう、良いんです」
『天祥院くん。
本当に。
良い、暇潰しをありがとう。』
『久しぶりのお返事ですね
あなたの病室は空っぽでした。
もっと大きな病院へ行くんですね。
あなたの話を聞きました。あと一日でも手術が遅れたら生きられなかったと。そして、あなたはその道を進もうとしていたことを。
あなたが生きる道を選んだことを、僕は嬉しく思います。
僕は、暇潰しなんかしていませんでした。
あなたとの手紙のやり取りは、本当に楽しかった。
だから願って良いですか。
再び、手紙の返事があなたから来ることを。
僕は待っています。
どうか、生きてください。』