第6章 これが最後 天祥院英智
手紙の内容は何てことない。
落とし物なんて言うから驚いたのと、暇がつぶれて良いと書いてあった。
『普通に届けてくれてよかったのに』
彼のクスクス笑いが聞こえてきそうだった。
手紙の入っていた封筒には『眠っているから、置いておきますね』と走り書きでメモしてあった。
………寝顔、見られたのだろうか。
退院しても引きこもりがちで、外にでないため色白を通り越して青白いこの顔を。
眠っているとまるで死人みたいだと両親が嘆く、この顔を。
「……………困るよ」
私は苦笑いを浮かべた。
「嫌な暇潰しだな」
長い療養生活はすっかり独り言に抵抗がなくしてくれた。
ペンを持ち紙に体を向ける。
『お返事ありがとうございます
でも、寝顔を見られるのは恥ずかしいです。
天祥院さんは普通に届けてくれてよかったのにと言うけれど、私には勇気が出ないです。だから、落とし物としてまた届けますね。きっと優しい看護師さんは、許してくれると思うんです。
勝手なワガママですけど。』