第2章 星降る夜 遊木真
学院の屋上で、その時を待つ。見終われば家まで送ってくれると言ってくれたが、彼の家も私の家もそんなに近くない。きっと時間切れはすぐそこだろう。
「ちゃん、学院には慣れた?」
静まり返った屋上で彼はそう聞いてきた。
「……………まだ、ちょっと。」
散った桜が目立つ季節になったが、私はいまだにぐずぐずしている。
まるで遅咲きの桜だ。
「そっか。」
真くんはにこやかに返してくれた。
「僕も最初はそうだったよ。不安だらけだった。でも、今は大丈夫って思えるようになったよ。」
「…………」
昼間のおどおどした雰囲気が一切ない。私は頭上の星を見上げた。
「……………星ってさ」
「うん?」
「……………………何億光年と前の光を私たちに届けてるんだよね。」
真くんはあぁ、と同調した。一度は聞いたことのある豆知識だ。
「古いもののはずなのに、新しい存在の僕達が見ても綺麗って思うんだからすごいよね。」
「…………」
私は黙って頷いた。緩やかなそよ風が屋上に吹いた。
「まだかな、流星群。」
人差し指を伸ばして、夜空に線を引っ張って流れ星を描く。
その時。
キラリと光るものが見えた。
「わ…っ!!」
「嘘………」
屋上にてんでそろわない声が上がった。
流れ星が、次々に空を横切っていく。
正しく流星群だ。
「………綺麗…」
「あ!あの流れ星、大きい!!」
真くんがはしゃいで手を伸ばす。星をつかもうとするみたいに思い切り。
私も手を伸ばしてみた。たくさんある流れ星のうち、一つを追いかけた。
何億光年と昔の光が、鮮やかに流れていく。
お願い、消えないで。
私はそう願いを込めた。
流れ星に、三回お願いをした。