第5章 好きでしょ? 葵ひなた
…………いや何やってるの?
私は駅に一人でポツンと立っていた。
夢ノ咲からどうやって駅に行くのか知らなかったので、新たな新地開拓ができたと言えばプラスだ。
(あーあ、ばっかみたい。あの二人のことなんてもう知らない。)
何てことを毒づいたがモヤモヤは止まらない。
(……………)
私は立ち止まった。
赤信号がギラギラ光って見えた。
(…………………わかってるのに)
まるで私を訴えるようにそれは光り続けていた。
(…………………………………………こんなはずじゃなかったのに)
ひなたとゆうた。
ただの知り合いだった。バイト仲間だった。父がよく気にかけて面倒を見ていた子達だった。大道芸が面白くて、よく見せてくれた。お店の皿を一枚も割らない器用な子達だった。
それだけなのに。
それだけだったのに。
_______変わってしまった
ひなたとゆうたは、私の中で大きな存在だった。あの二人がいたからこその思い出が私には多すぎた。
「………言わないでよ」
駅前の道路は、やたらと騒がしくて賑やかで、車がよく通っていた。
「………………“好き”なんて言わないでよ」
私は一歩足を踏み出した。
車が来ていることはわかっていた。信号がまだ青にならないことはわかっていた。
でも。
もう、そこしか私の行き場所はない気がした。
「「!!!!!!」」
信号が青に変わった。まだ帰省ラッシュの時間ではないのか、その横断歩道を歩く人はいなかった。
二つの手で後ろに引っぱられて尻餅をつく私と、そんな私を肩で息をしながら見下ろす双子がいた。
「…………ッこのバカ!!!!!」
「ほんっとバカだよ!!!!!」
二人は怒ったように叫んだあと、力が抜けたのかへなへなとへたりこんだ。
道行く人が何事かと道端に座り込む三人の高校生を見ていた。