第5章 好きでしょ? 葵ひなた
「……ひどいのは………だよ」
ひなたは責めるように言った。
「そこまで、わかってるじゃん。」
「……………ひなたは強要なんてしない。なのに、あれはしつこいにも程があった。」
あれと言うとこの前のやりとりだ。ひなたは苦笑した。
「ねぇひなた。人の心はそんな簡単に変わらないよ。何であんなことしたの?私の気持ちは無視なの?ゆうたと私がそんなことになって、ひなたは何を得するの?それでゆうたは幸せなの?」
「………幸せだよ。だって、ゆうたくん…………のこと…。」
ひなたは口ごもった。
「………………………好きだもん」
その答えに驚くことはしなかった。気づいていたとか、知っていたとかそんな自惚れたことはない。
が。
あの時。私に抱きついてきたとき。
「……ゆうた、苦しそうだったよ。」
確かに震えていた。私にすがっていたんだ、ゆうたは。
「…………」
「ひなたのことわからないって。」
「………」
「ねぇ、そんな幸せって馬鹿馬鹿しくない?ゆうたのこと考えてるなら、そうやって遠ざけないでよ。」
私が言うと、ひなたは勢いよく首を振った。
「違うよ…!!俺は…!今のままじゃ、ゆうたくんに嫌な俺を見られちゃうから…!!」
「ひなた……?」
「醜いんだよ、本当に!!本当の俺は駄目なんだ!!」
「静かにして、バレちゃうでしょ」
私が注意を促すために近寄ると、ひなたは勢いよく私の手を引いた。
「………ひな…」
「……もうしゃべんないで」
ひなたは、泣きそうな声で言った。
「我慢できなくなっちゃう」