第5章 好きでしょ? 葵ひなた
中華料理屋として出前に行くこともある。これがなかなかの重労働で、狭い住宅街なんかじゃ自転車にも乗れないから困りものだ。
男手がほしいな。ひなたとゆうた、全然来ないな。忙しいのかな。
あの時のマンゴーのタッパーはとっくに返却されていた。
『元気そうだったよ』
父が嬉しそうにそれを洗いながら言った。
出前を終えて、それ専用の金属の箱を持って店へ戻る。
その頃には客もいなくて、暖簾をしまうように父に言われた。
私が店の外に出ると、
「」
ひなたがいた。何だか、右の頬が赤い。
「………ごめん」
私が暖簾を下げ、店に戻る時にポツリと言った。
「謝られても困るんだけど」
それだけ言い残し、ひなたを視界から外した。
風呂から上がって部屋着を着込むと日付が跨いでいた。
『ねぇ』
ひなたから連絡が来ていた。
『家から出てこられない?』
「やめてよ」
文面上のやり取りなのに、私は声に出して答えていた。
「何なの、あんた達」
私はスマホを片手に、両親の寝室をすり抜けた。
店の裏手からこっそり外に出て、表に回った。
「……「ひどいよ、ひなた」」
さっきと格好が変わっていない。ずっとここにいたのか。まるでストーカーじゃないか。
でも。
そこまで、ひなたがしたんだ。
「何でそうやって誤魔化して話してくれないの?私って頼りない?私が嫌い?うっとうしい?」
「ちが……っ…!」
「ねぇ、ひなた。あなた私に言ってほしかったんだよね。」
ひなたは絶望仕切ったように青ざめた顔をしていた。
「私がゆうたを好きだって。」