第5章 好きでしょ? 葵ひなた
___言いたくない。
私は咄嗟にそう答えていた。
「ひなたに言われたことはゆうたに言えることじゃない。」
「……どういうこと?」
ゆうたも何だかしつこい。
「そんなに気になるわけ?」
「あぁごめん……。アニキが変なこと言って嫌な思いさせてたら申し訳ないなって…。」
「………嫌だったことは認める。でもそんなに申し訳なさそうにされたくもない。」
素直に伝えると、ゆうたは納得してないような顔をした。
「実はさ……ここ最近、アニキの様子が変なんだ」
「………」
「に何か相談してたのかなって……。俺には何も言わないし。その相談の内容で怒ってたんじゃないの?」
ゆうたの指摘に頭を悩ませる。
相談?ひなたが??
『ゆうたくんのこと好きでしょ?』
あれが??
「……ムカついたのは確かだけど、押し付けがましかったから。」
「押し付けがましい?」
「『俺はこう思うからもそう思うよね』って感じがした。」
ひなたはゆうたを本当に大事にしてるから、弟の恋愛面にもうるさいのだろうか。そう思えば相談だったかもしれない。
「…………………わっかんないなぁ。本当に俺には言いたくないの?」
「うん」
「もう、つれないなあ。」
「ゆうただけじゃなくって、父親にも友達にも誰にも言いたくないことよ。」
あんなことを他人に言いふらせるほど私は図太くない。
「…………ねぇ、アニキって何か苦しんでるの?俺もうわかんない……」
ゆうたは弱々しく頭を抱えた。
どこか既視感を覚えたその姿に、私はひなたを重ねていた。