第4章 守りたいもの 氷鷹北斗
北斗は病院に通いたかったが、もう学院も新学年の生活が始まってしまうためにかなわなかった。
しばらくしてから、北斗は父に言われた。
「姫ちゃん、退院したそうですよ」
部屋の入り口で、短く言われた。
「相変わらずのようですが、記憶を維持できるようになったとのことです。」
北斗は返事をしなかった。
実は、一冊だけ彼女に渡さなかった日記がある。
父が去ったあとそれを読んでいた。
『辛くない。私は辛くない。』
北斗は日記全てに違和を感じていた。
普段のは感情に溢れる話し方をするが、まるでこの日記達には感情がない。
じゃない、他の誰かが書いたみたいだ。
自分を誤魔化したくて必死だったのかもしれない。
『弟を守らないと』
日記にさえ嘘をついた。
『私はまだやれる』
その結果がこれだ。
「…………………………姫」
北斗はペンを手に取り、便箋を取り出した。
「………もう、遅いのかもな」
大事な、大事な幼なじみ。
いつ出会ったかも思い出せない幼なじみ。
自分の青春を彩ってくれた、幼なじみ。
なくてはならない存在だった。これからも側にいてほしかった。
嘘でも、笑っていてほしかった。