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続短編集…あんさんぶるスターズ!【あんスタ】

第4章 守りたいもの 氷鷹北斗


ゆっくりと父親が扉を開けた。北斗は、先程の約束のこともありなるべく音をたてないように足を踏み入れた。


「姫」


久しぶりにそのあだ名を呼んだ。彼女の名字からとったもので、小学校のときは全員からこう呼ばれていた。


「……………」


それに反応したのか顔をこちらに向けた。


「僕の息子です。」

「………」


彼女は困ったように北斗を見つめた。


「いったい何なんだ、さっきから。」


訳がわからない北斗は説明を求めて父親に詰め寄った。


「話を……、話を聞いてあげなさい」

「父さんが話せば「大きな声を出さないでください。」…………っ!!」


北斗は唇を噛み締め、幼なじみを見やった。
彼女は怯えるように二人の言い合いを見つめている。


「……………わかりますか?」

「……………………」

「北斗です。氷鷹北斗。」


はそう言われ、キョトンとしていた。
そして驚きの言葉を吐き出す。


「さん、の、幼なじみの」


それを聞いて北斗は驚愕した。

まるで自分のことを他人ことのように話し出したからだ。


「何を……はお前、姫だろう…?」

「………………………………え?」


は困ったように首を傾げた。


「……………皆さん、そう言います…………どうしてですか……」

「………覚えてないのか……俺を………」

「わかります、氷鷹北斗くん。王子くん、ですよね。」


北斗はゾッとした。
顔も声も何もかもがなのに、中身がまるで違う。


「誰だ、お前………」


思わず北斗は口にした。
目の前の幼なじみはしばし思考を巡らせる素振りを見せた。

北斗の知る限り、は考え事をするとき利き手である右手を握ったり開いたりする癖があった。変な癖だから、よく覚えていた。

でも違う。今は虚空に顔を向けてギュッと目を閉じてうんうん唸っている。


「それが…わからないんですよね…」


やがて彼女は困ったように笑った。


違う。


は、こんな顔で笑わない。





「私、誰なんですかね?」



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