第4章 タイムリミット
「…!!」
ローの顔が目の前にある。
今までこんなにじっと見たことがなかったが、ローは綺麗な顔をしていた。
整った顔立ち、少しくせ毛な髪、ふわふわの帽子。
いつもは嫌いなトマトの味なんて分からなかった。
心臓がどきん、どきんと激しく音を立てる。
「そんな黙り込む程不味かったか?梅干しに比べたらよっぽどマシだと思うが…」
ローは私の顔を触っていた手を離した。
「じ、自分で食べるって言ったのにっ…!」
「今回はここで許してやる。次やったら…容赦しねェからな。」
ローは私のおでこをコツンと叩いて部屋を出ていった。
「はぁ…」
何をこんなにも動揺してるのだろう。
私はその場にへたへたと座り込む。
今でもまだ鼓動が早いのが分かる。
さっきローの手が顔に触れていた時の温かみがまだ残っている。
ローといると、なんでこんなにも心地が良い?
なんでこんなにも心臓が早くなる?
なんで―――
まぁいい。
こんな生活も、あと少しで終わる。
もう決めたことだ。
寂しくなんかない。
後悔もしてない。
これが私の決められた“運命”のはずだから。