第4章 タイムリミット
「なんだこのくっそいい匂い!」
「バターみてェな匂いするぞ!!」
今日の朝はパンを手作りしたのだ。
「今朝は小麦粉が多く買えたから、パンを焼いてみたの。美味しいといいんだけど…」
「「「女の子の手作りパン!!!」」」
みんな喜んでくれたようで、作って良かったなと感じる。
「あっ…でもキャプテン…」
シャチがそう呟くと、みんなが一気に困った顔になる。
「ローがどうかしたの?」
「実はキャプテン…パンが嫌ェなんだよ…」
私はそのことにショックを受けるよりも、“かわいい”と思ってしまった。
あんな顔でパン嫌い…。
なんでも食べそうなのに好き嫌いがあるなんて、意外である。
「ふふ…ローにも嫌いな物があるのね。」
「あぁ。確か梅干しも嫌ェだったな?」
「おにぎりと焼き魚はキャプテンの好物だよな。おにぎりの具といえば梅干しなのにな。人生損してんなーキャプテン。」
まさかローに好き嫌いがあるとは思わなかった。
しかも好きな食べ物はおにぎりなんて。
なんとかわいい一面だろう。
「じゃあローにはおにぎりでも握ろうかな。」
私は手を洗い、おにぎりを握り始める。
(なぁ…あれ素手だよな…)
(素手…だな。リンの手作りでしかも素手で握ったおにぎり…)
(キャプテン前嫌がってたよな素手で作ったおにぎり…潔癖の気あるもんな…)
(おれも女の子の手作りおにぎり食べたい…)
私は鼻歌交じりにおにぎりを作った。