第2章 純情スクイーズ
トドちゃんは、私の姿を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。目に涙をいっぱい溜めながらぼふっと抱きついてくる。
「ごめんなさーい!」
「えと、やっぱり迷子になってた?」
コクコクと頷く彼を抱きしめ返す。
ぎゅうってすると、トドちゃんは抱きしめる力を強めてぎゅってし返してくれた。
可愛くて忘れがちだけど背は一応彼の方が高い。抱きすくめられ背伸びする。
「く、苦しい、嬉しいけど苦しいっ」
チョロ松くんがいる手前、名残惜しいけど私から離れる。
「ごめん、ボク嬉しくなっちゃって、つい」
「私も嬉しかったよ。じゃあチョロ松くん見つかったし帰ろうか?」
「その言い方語弊がありません!?」
「だって、トドちゃんはチョロ松くんを探していたんだもん」
「ね?」とほっぺをぷにぷにつつけば、トドちゃんは嬉しそうに目を細めてはにかんだ。うわ、かわいい、やわらかい、すごい弾力。癖になりそう。
「まったくぅ」
困り顔なチョロ松くん。この顔にさせるの今日で何度目だろう。でも、何度困らせても結局は面倒見てくれるチョロ松くんってやっぱりいいお兄ちゃんだ。
「邪魔しちゃうし、僕は1人で帰りますよ」
「待って」
トドちゃんの手を引き、チョロ松くんの左手に結ぶ。反対は私。トドちゃんを真ん中にして3人で手を繋ぐ。
「な、なんですか?見つかったし僕はもう…」
ほんとはね、トドちゃんを独り占めしたい。私だけ見てほしい。でもそれをトドちゃんは望んではいない。トドちゃんはきっと——
「3人で帰ろう?」
「……うんっ!」
ほらね、この笑顔。
トドちゃんは、渋々手を引き歩き出すチョロ松くんと私の顔を交互に眺め、愛情いっぱいな笑顔を見せる。
ねえトドちゃん。お兄ちゃん大好きっ子な君は何度も私を妬かせるけど、その笑顔の為なら私はなんだって出来る気がするよ。
ずっとずっと、君の笑顔を隣で見ていられますように。
「のぞみちゃん」
「ん?」
顔を向けた刹那、甘いキスが頬に落とされる。
「えへへ、ずっと一緒だよ」
ほんの一瞬、されど人生で1番幸せな、そんな1秒間。
純情スクイーズ——完