第1章 恋はプレーン味
それはいつものように友達と歩いていた帰り道での出来事。
「あー受験やだなぁ」
「あたしバイトでほとんど勉強できてない」
「進路どーしよー。のぞみはもう決まった?」
帰り道が同じな岩瀬ちゃんとはこうしてよく一緒に帰っている。高3にもなれば、会話が尽きると大体話題は受験とか進路になる。
「決まってないよ。岩瀬ちゃんは?」
「うーーん、候補は絞れてきたんだけど——」
と、岩瀬ちゃんが何かに気づき話を止めた。
「は?ふざけんなよ。お前今なんつった?」
「お前から言い出したんだろ!」
通りの向こうにある公園から口論が聴こえてくる。
「あいつら何やってんの」
呆れたように半眼で岩瀬ちゃんが呟いた。
公園で喧嘩中なのはクラスメイトの大野くんと杉山くん。互いに一歩も引かずバチバチと火花を散らしている。嫌な場面に鉢合わせてしまった。
「あの時お前があーでこーではんにゃらほんにゃら!」
「そーなってこーなったんだろ!!」
「ああ!?かくかくしかじかぁぁぁぁ!!」
ついに杉山くんが大野くんの胸ぐらに掴みかかる。凄い形相。今にも手が出そうだ。
「止めないと!」
車が通り過ぎたのを確認し、私は公園へと足を向けた。
「いいよほっときなよ」
「怪我したら大変だよ——ねぇ!!」
意を決して声をかけたその時だった。
「おーいお前らなに喧嘩してんだよー」
背後から突如現れる、これまたクラスメイトの声。