第1章 Live and let live
「気づいたら…?お前、あ〜〜……名前は?」
「……です」
平和なあの世界でのうのうと惰性で生きてた20年弱では知りえなかった空気。
「まあ、敵意はなさそうだねい。……今のところは」
痙攣しているかのようにおぼつかない頭で少し考え、余計なことは喋らなかった。
特に私が違う世界から来たとか、その世界にはONE PIECEって漫画があるとか。
『貴方はフィクションの中の人物だ』なんて、冗談だとしても気分のいいものではないだろう。
それに加えて自分たちのことをポンポン言い当てられたら、……まず間違いなく怪しい。
下手すれば一発で首と体がオサラバ。
とりあえずは無害な一般人であることを理解してもらうのが先決だった。
「、記憶はあるかよい?どこからこの船に乗った?」
「自分の部屋にいて、気づいたらここに来てました」
本当にそれ以上でもそれ以下でもない。
ていうか一番混乱してるのは私だ。
この船、ってことはここはモビーディック号なんだな、と1時間前の私ならゲラゲラ笑ってそうな言葉の響きにも納得してしまう。
だって目の前にマルコいるし。
「能力者か…?目的はないんだな?」
「はい、自分がどこから来たのかも…わかりません」
もしここが白髭海賊団ではなかったとしたら、と考えると顔の血の気が引くのがわかった。
さっきからオーラにビビり倒しているマルコでさえも、海賊の中ではまだ温厚な方なのかもしれない。
仮にビッグマム海賊団や、カイドウのところなんかに突然現れたりしたら、まず間違いなく目覚めるまでもなく死んでた。
「嘘を言ってるようには思えねェな。とりあえずオヤジには報告するから、どうするからそれから決めるよい」
ほらいつまでそうやってるんだよい、と言われ慌てて立つと、やっぱりマルコは想像よりも大きかった。
自分がそこまで小さい覚えはないが、立ったところで目線は彼の胸元までしか届かない。
マルコもマルコで立った私に一瞬えっそんだけしかないの?みたいな顔をした後、
「お前……大丈夫かよい?」
と何故か心配をしてくれた。