第3章 あまのじゃく/朔間凛月R18夢※※
秋の夕暮れ時の校舎内、生徒のほとんどは下校しているか、各ユニットごとにレッスンをしている頃。
凛月が二年の教室前を歩いていると、教室によく見知った相手がいるのが目に入る。
「あんず?」
誰もいない教室に、一人で机に突っ伏して寝ているのは、夢ノ咲学園唯一のプロデュース科に所属しているあんずだ。
あんずは彼女の努力によって、学園のどのユニットからも信頼を得ている。
そして、彼女は分け隔てなく自分たちアイドルに接してくれる。
そんな彼女だから、誰もがあんずにプロデュースしてもらいたいと思っている。
もちろん、凛月もその一人だ。
けれど、凛月はそれだけではない。
他とは違う、甘い香りのするあんずがお気に入りなのだ。
そのあんずが、無防備にもこんな、誰がいつ来てもおかしくないところで眠っている。
よっぽど疲れているのだろうか。
「あんず、こんなとこで寝てたら風邪ひ……」
凛月があんずを揺り起こそうと肩に触れると、ふと違和感を感じた。
あんずが寝ながら枕にしてるのは、真緒の衣装だ。
大事そうにギュッと握りしめている。
そもそもここは、あんずのクラスである二年A組ではない。凛月や真緒のいる二年B組の教室だ。
そして、あんずが座っている席は凛月の席の隣り。
真緒の席だった。
「なにそれ…………。これって……まさか」
凛月が困惑しながら後ずさると、あんずは小さく身動ぎ、目を覚ました。
「ん……、えっ、え!?さ、朔間くんっ?」
はじめはぼんやりとした表情のあんずだったが、凛月の姿を見た瞬間、目を見開き、驚きの声を上げた。