第2章 何気ない日常
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「アンタ、何連勤よ」
「…今月はほぼ週5です」
私達はバイト先から徒歩10分くらいのところにある、チェーン店の回るお寿司に来ていた。
「…なんでそんな働いてんの?」
「本が好きだから、ですね」
来たばかりの茶碗蒸しを一口救って食べるとほろっと卵の優しい味が口いっぱいに広がる。
「今のアンタならきっと、カフェで働いてても『コーヒーが好きだから』とか言うと思う」
「あはは、ご名答です」
「彼氏の一人や二人はいないわけ?」
「いないです」
「友達は?」
「先輩は私の母親ですか。友達ならいるので安心してくださいよ」
普段はサバサバしててカッコいいのに、こういうときだけなんだかおかんなところを発揮してくる先輩。
「そういや、先輩」
「なんだね、後輩よ」
「就活、上手くいってるんですか?ここから本格的にじゃないですか」
「まぁ、ぼちぼちってとこかな。うかうかはしてらんないね」
先輩は私と2つ差だから、現段階で四年生となる。と、なるとだ。四年生の6月なんて、大事な時期真っ只中なのではないか。でも、先輩は文系の私と違い、理系の人間だから多少なりとも道は広いし、余裕もあるのだろう。
「も、すぐよ、すぐ」
「ですよねぇ」
「やりたいこととか、ないの?」
「…わからないんです」
なにか夢があるわけじゃない。どんな企業につくにしろ、大学卒業という資格はあって困らないものだと思い、大学に入った。文学部、なんてものに所属してるもの、やりたいことは一向に見つからないのが現状だ。
「難しいですね」
私がボヤくと。
「そだねえ」
と、悪戯な笑みを浮かべた。