第2章 何気ない日常
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「またお越しくださいませ」
何人もの人間が同じフロアにいるのにも関わらず、聞こえてくるのはレジ打ちをする店員の声と、本を捲る音だけ、というのは書店の特徴の一つでもあるだろう。
あ、今日の夜ご飯のおかず何にしようかな。
そんなくだらないことを考えながら、大好きな本に囲まれているという嬉しさを噛み締めながら、レジに立つ。
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時間が経つのは早いもので。今日のシフトは19時迄だったので、先輩、同僚、後輩にお疲れ様でした、と一声かけて帰宅準備をする。
「あ、」
「何でしょう?」
声をかけられたのは、白井菜乃花先輩。黒髪ストレートが良く似合う大人の女性って感じ。私がまだ入りたての時からお世話になっている先輩だ。
「この後食事どう?私も今日終わりなんだよね」
「んー、私は今日はお寿司が食べたい気分ですねえ」
「さり気なく要望入れてきやがった…いいよ、行こうか」
「ご馳走になります」
「あ、その代わり回る寿司だけどね」
「全然構いませんよ。誘ってもらえるの、有難いので」
優しい先輩の気遣いから、私達は寿司屋に行くことになった。