第2章 何気ない日常
「あっつい…」
水無月の中旬。例年とは異なる、真夏のような暑さではない肌にじっとりとした熱気がまとわりつく。耳には相変わらず、夏の風物詩であるセミの大合唱が聴こえてくる。地球温暖化がどんどん進んでいるのだ。今から数年後の日本がどうなってしまうのか全く想像ができない。
「ー!」
「…あ、春夏」
向こうの方から私の名前を呼び近づいてきたのは、逢瀬春夏。田舎から上京してきた私は、都内の大学でやっていくのがとても不安で仕方がなかった。残念ながら、高校時代の友達とは学校は別だし、上京してくる子もそんなに多くなかった。思いやられる中、話しかけてくれたのが春夏だったのだ。
「これからカフェ行かない?課題もそろそろ終わるし!」
「ごめん、私これからバイト」
「またあ?働きすぎじゃない?」
「今月厳しくてさ」
「それ、先月も言ってたよね」
働くのが嫌いな訳では無い。むしろ、好きなくらい。バイト先は本屋。私は本を読むことはもちろん、物語を自分で書くのも好きなため、バイト先は迷わず本屋にしたのだ。因みに、これは高校生の頃からずっと決めていた。
「また今度埋め合わせするからさ」
「もう、あんまり無理するのは良くないよ」
「うん、ありがとう」
春夏からの忠告を聴きながら、私達は帰路についた。