第1章 思い出
祖父が帰って来て、話を聞いた銀おじちゃんは、その日のうちに旅立ったわ。
仲良くなった旅人との別れは慣れていたから、泣いたりはしなかったけれど、私ね、約束をしたの。
「銀おじちゃん、お友達の高杉さん?と仲直りして、ここに一緒に来てね」
って。
そしたら困ったような顔で、
「えー、どうせ一緒に来るなら、きれいなお姉さんと来たいんですけどー」
とか言ってたけど、最後はちゃんと指切りしてくれた。
「分かった。約束な」
って。それで別れたの。
見送りに出た祖父が、父さんと同じように
「若いのに…随分な業を背負った方だ」
そう言っていたわ。
子供だった私には「業」が何なのか、銀おじちゃんが何をしようとしていたのか分からなかったけど、きっとまた逢えるって思って、背中が見えなくなるまで手を振ったわ。