第7章 丁稚奉公
俺の新しい螺鈿細工は認められ、今までコツコツと作ってきた螺鈿細工も店頭に並べられることになる。
見習いから昇格した俺は家の手伝いだけだったが、店のために螺鈿を作ることになり、更に充実した日々を送る。
そして──。
【百之助】
慶次さん。算術解き終わったよ。
【慶次】
どれどれ、ちょっと待ってくれ。
俺が螺鈿細工をする横で、百之助は丁稚奉公の仕事をするのにあたって必要な勉強をしている。
まだ外回りの仕事を任せるには早いため、まずは家の中の仕事をこなしてもらい、百之助は真面目にしっかりとこなしている。その様子をみて親父やお袋、兄貴は相変わらずだが自然に打ち解けている様子だ。
【慶次】
お、全問正解だ。やるな~。
【百之助】
次は何をすればいい?
【慶次】
ん~、そうだなぁ・・・・。
ぐりぐりと百之助の撫で心地の良い頭を撫でていると、親父の姿が目に入る。
【赤松父】
慶次。二階の物置小屋を整理して、百之助くんの寝床を作ったらどうかと思うんだが。
【慶次】
まだ俺の部屋で良いだろ。葛籠箱を片付けた方が早い。
【赤松父】
しかしなぁ。百之助くんだって自分の部屋が欲しいだろう?
そう言って父は百之助に問うものだから、俺はそうはさせないと横槍を入れる。
【慶次】
あんな薄暗いところに一人でやるわけには行かないだろ。それにまだまだ教えたいことがたくさんある。百之助も俺といるのが苦痛ってわけじゃないだろ?
百之助は交互に顔を見て、少し目を細めて言葉を口にする。
【百之助】
まだ、たくさん教わりたいこともあるので、慶次さんが迷惑じゃなければ一緒の部屋に住まいたいです。
そう。俺のためにもお前のためにも離れるなんて選択肢はない。
俺の部屋では密かに翻弄されながら蜜の時間を過ごしている。
誰にも邪魔されたくない。
前よりも生き生きとした姿は何よりも喜ぶべきことであり、俺だけに見せる顔も含めて──。
続く