第6章 首輪*
翌朝。
昨日はあんなことやこんなことがあったのに、不思議と早く寝れてしまったらしい。
色々考えすぎたか。
精力を放って疲れたか。
百之助はまだ目を瞑って寝ているようだ。
襖を開けると日の光が差し込み、朝日に起こされたように百之助も大きな目を擦りながらむっくりと起きだす。
【慶次】
おはよう、百之助。
【百之助】
・・・・おはよう。
百之助は昨日の出来事を覚えているだろうか。
俺の指を舐めて。
触ってほしいと誘って。
俺の手の中に吐き出したことを。
そんなこと聞くのは野暮だろうし、厠へ行ったり顔を洗ったりして仕度をすませる。
【百之助】
ねえ、慶次さん。
【慶次】
ん?どうした?
【百之助】
・・・・なんでもない。
【慶次】
?
朝ご飯が出来るまで漆器の状態を確認してところ、一緒にいた百之助が着物の裾を引っ張ってきた。
何かを伝えようとしたようだが結局は分からず、そのまま居間へ向かう。
【慶次】
いただきます。
よく噛んでご飯を食べていると、目の前に座っている親父は俺を顔を見ている。
なにか可笑しなところがあるんだろうか?
昨日、百之助とあんなことやこんなことをしたからか?
いや問題ないはずだ。
顔には出さないようにしているし、顔にご飯粒が付いているだけなのかもしれない。
【慶次】
何だよ、親父。人の顔ジロジロみて・・・・。
【赤松父】
お前、・・・・ここんとこ虫にでも食われたか?
親父は自分の首あたりに手を置いて指摘する。
首を、虫に、食われた?
そしてハッと気づかされる。
イク瞬間、思いっきり百之助に噛まれていたことに!
【慶次】
あ~・・・・腹減ってたんじゃないかな。
【赤松父】
思いっきり歯形が付いてるな。はっはっはっ。百之助くんもやるじゃないか。
【百之助】
・・・・・・・・。
だから百之助は俺に何か言おうとしてたのか。
だったら早く教えてくれ!
俺は静かに嘆きながら、あとで手鏡で確認する。
【慶次】
当分、消えそうにないな・・・・。
真っ赤になった痕は自分のものだと印をつけられたようで、ちょっと嬉しかった。