第5章 猫*
こういったことが始まったのは、俺が一人でこの屋敷に上がるようになってからだ。
父とまだ真面目だった兄貴に仕事を教えられ、父はこの事実を知っているのかは知らないが、兄貴はこの物好きに咥え込まれていたらしい。
しかも最後までやったと。
若奥様は綺麗で若い男が大好物だ。
俺以外にも咥え込まれている奴が他にもいっぱいいるのに飢えているのか、俺は立たないのに、最後までできないというのに、咥えられている。まったく理不尽だと思う。
【慶次】
(やっぱり勃たないか。
あの時──・・・・百之助に触っただけで勃ったのに、色んなものを咥え込んでる熟練者にされても一向に興奮さえ覚えない。今はもう慣れもあるが、最初に頼まれた時は驚いてされるがままだった。
最初が重要だったとか。
それとも百之助に限らず、幼児に対してそういう趣味があったとしか・・・・)
うわの空になって天井を仰いでいると、水音が止んで、濡れた唇を拭いて顔を上げる。
【若奥様】
好きな子でも出来た?
【慶次】
え?
若奥様にそんなことを言われて少し動揺する。
好きな子、か・・・・。
たしかに百之助は好きだし、とても愛らしい。
帰った時からずっと百之助のことばかり考えている。
可愛いから好き。
だがそれ以上の好きってなんだ?
【若奥様】
貴方でもそういう顔をするのね。ここは全く無反応なのに。
【慶次】
・・・・あの、今日はこの辺でお暇してもよろしいでしょうか。やりたいことを見つけました。
【若奥様】
あらそう・・・・。じゃあこっちはまた今度ね。
【慶次】
ええ、旦那様にでもしてもらってください。では失礼いたします。
この好きという気持ちの正体を早く突き止めたい。
こんなに四六時中、人を想うほどの好きとはなんなのか。
お屋敷を出ると少し駆け足で畑の方へと向かうのであった。