覚えているのは、好きだったってこと。【気象系BL小説】
第1章 声が聞こえる。
『翔、もう朝だぞ…?
起きろよ…』
「ん…?」
誰かに起こされた気がして目を覚ます
でも寝室には俺の他には誰もいない
「…?」
夢、にしてはリアルな口調だった
まるで何回も言われているような
でも知り合いにあんな言い方する人はいないし…
やっぱり夢か、なんて1人で結論を出すと温かい布団を身体から離してリビングに向かった
「あ、おはよ翔ちゃん」
寝室のドアを開けた音で気付いたのか、キッチンから雅紀が顔を出してきた
良い匂いがリビングに広がっているから、朝食を作っているんだろう
一緒に暮らすようになってから、家事の中でも料理が壊滅的に出来ない俺に代わって雅紀が毎食作ってくれている
(昼は弁当まで)
「今日の朝ごはん、何?」
「卵が今日賞味期限だったからさ、オムライスにしたよ!」
雅紀がほら!と綺麗なオムライスを見せてくる
その嬉しそうな表情とお皿の上の黄色の風景が一瞬だけ二重になった
朝起きたばかりなのに目が疲れているのかと思い、眉間に皺を寄せるとどこか遠くの方でキィンッと甲高い音がした
思わず耳を塞ぐと、心配そうに俺を見る雅紀と目が合った
「翔ちゃん、どうしたの?」
「ちょっと耳なりがしただけ…大丈夫だよ」
安心させるために少し笑えば、俺の様子を伺いながらもキッチンへ戻って行った
その後ろ姿を見送ってから、俺は顔を洗うために洗面所へ向かう
鏡の中に映る自分を見て、
いつも通りの自分の顔に安心するのと同時に、4年経っても自分の記憶と少しだけ違うその顔に違和感を覚える