覚えているのは、好きだったってこと。【気象系BL小説】
第3章 雅紀の恋人
そもそも会社の同僚で入社してから2年の間、課が同じとはいえそんなにプライベートで遊んでた訳でも無いらしいから、翼くんにとっても知らない俺ばかりで、少しずつお互いを知っていく感じが楽しかった
今では普通に友達として接している
「翼くん、その荷物どうしたの?」
リビングにどさっと紙袋を置いた翼くんに尋ねるとにやっとしながらその中身を取り出した
「じゃん!どう、カッコイイでしょ?」
「格好良い!…けど何で洋服?
翼くんっぽくないし…」
翼くんが出してきたのは洋服一式
靴まで揃えてあるから重そうだったのか。
「これ、俺じゃなくて翔くんが着るんだよ!」
「え?」
「今日は外でデートしよ?」
聞けば前々から雅紀と相談して準備していたらしい
いくら雅紀と翼くんのおかげで今の生活に慣れたとしてもやっぱり家の外や周りの人の目は未だに怖い
家から駅前ぐらいまでなら特に戸惑うことなく1人で行動出来るが、少し電車に乗ろうとすると記憶と違うことばかりで上手く歩くことが出来なくなる
こんな大人の男が駅の改札の前でキョロキョロしてても誰も助けてくれないし、むしろ変な目で見られる
だから電車には全く乗っていない
出かける時は雅紀か翼くんと一緒で、2人といるなら車を運転してくれるから乗る必要も無い
カウンセリングのために通っている病院だってまぁ少し遠いけど歩いていけない距離では無いし
だけどこのまま電車を使えないのは不便だから…という事らしい
「別に翔くんが1人で、って事じゃないよ?
怖かったら車で行けば良いし!ただ、俺らが翔くんと電車に乗りたいだけ!
…だめ、かな?」
そんな風に言われてしまえば断れなくて(元々断るつもりも無いけど)、電車を使って出かけることになった
ちなみに洋服を一式用意してくれたのは俺がこの4年間で全く服を買わずに適当に過ごしていたからだそうだ