第15章 下剋上
ふらふらと安土城の廊下を歩くさえりに三成が声をかけた。
「さえり様、お疲れですか?」
「うん、ちょっと寝不足……って三成くん!」
半ば無意識に答えていたさえりが我に返ったように飛び上がる。
「無理をしてはいけませんよ」
また針子の仕事で無理をしたとでも思ったのだろう、三成はニコニコと笑顔で釘を刺す。
「う、うん、そうだね」
さえりは違うとも言えず、曖昧に頷く。
「そろそろ軍議が始まりますので、広間へお越しくださいね」
「わかった」
無理をするなと言われても……
光秀さんが離してくれないし……
さえりはそこまで考えて赤面した。
ずっと頬が緩みっぱなしだ。
さえりは自分の頬をパンパンと叩き、気合いを入れ直してから広間へ向かった。