第12章 真実
「案外早かったな、家康」
「銃声が聞こえましたからね」
家康は馬から降り、近づいてきた。
「二人とも無事で良かった。向こうの処理を大急ぎで終わらせて追いかけて来たんですから」
「それは済まなかったな」
全く悪びれた様子の無い光秀を見て家康はため息をつく。
「光秀さんがあんなに慌てて飛び出すなんてビックリしましたよ。冷静に対処できるのか心配になるほど」
「家康」
少し咎めるような口調のあと、光秀は笑みを浮かべた。
「あの男を捕らえてきてくれないか」
「少しくらい仕返ししたっていいでしょ。分かりましたよ、捕縛しときます」
家康は背を向け男の方へ歩いて行った。
「仕返しって何の事でしょうね?」
さえりは小首を傾げる。
「さあな」
仕返し、ね。一体どれの事を指しているのだろうな。
何となく予想がつかなくもないが、と光秀は心の中で苦笑する。
「あの、そろそろこれ解いてもらえませんか?」
さえりは手を上げ、縄で縛られた手首を目で差し示した。
「俺はそのままでも構わないが」
「えっ、困ります」
「冗談だ」
光秀は手首の縄を刀で切った。さえりの手が自由になる。
「お前を縛って良いのは俺だけだ」
ニヤリと意地悪く笑う。
「なっ……!」
さえりは真っ赤になっていた。
今宵は十三夜。満月まではもう少し。