第12章 真実
光秀は力一杯さえりを抱き締めていた。
「光秀、さん、苦し、、、」
さえりの言葉に我に返る。
「あ、ああ、済まない」
そう言いながら力を緩めたものの、腕を解くことは無かった。
もうすでに、止まれない所まで来ていた
こんなにもさえりが大事になっていたなんて
こんな事になるまで、気付かないとは
「怪我はないか?」
体を少し離し隅々まで確認する。大丈夫です、と言いながら恥ずかしそうに頬を赤らめるさえり。
「さっき、様と呼んだな?」
光秀様! と叫びながら、自分の胸に飛び込んで来たさえりを思い出す。
「それは……命令、でしたから……」
動くなと暗に指示した事を理解し、信じてくれたさえり。
愛しさがこみ上げる。
光秀はさえりの頬を両手で包み込み、一瞬だけさえりの口許に口づけた。
頬でもなく、唇でもなく、口許。
「えっ、ええっ!?」
真っ赤になって驚くさえりを満足そうに見つめる。
「まだやることが残っているから、そうだな……満月の夜、俺の部屋に来い。いいな」
光秀はそう言いながら、袖から出した髪飾りをさえりにつけた。
「それって、どういう……」
さえりが疑問を口にしかけた、その時。
「光秀さん! さえり!」
家康が駆けてきた。