第10章 暗中飛躍
安土城、大広間。
「光秀は一体何を考えているんだ!?」
軍議の場で秀吉は鼻息荒く息巻いていた。謀反を疑う黒陽からの招待文が届いていたからだ。其処には明智光秀殿と仲良くなったから、信長様とももっと親睦を深めたいと書いてあった。
「俺が行って問いただしてやる!」
秀吉は今にも広間から飛び出しそうな勢いだ。
「止めとけ、秀吉が行くと話がややこしくなる。俺が代わりに行く」
政宗が目を爛々と輝かす。こちらもすぐに飛び出しそうだ。
「政宗さんが行ったら暴れて余計ややこしくなるでしょう?俺が行きますよ」
「家康様が行かれるのでしたら私も行……」
「一人で十分だ。三成」
三成の言葉を途中で遮って家康が言い放つ。
「わかった。家康、俺の代わりに招待に応じた振りをして様子を見てこい」
「はっ」
信長の決定にしぶしぶ従う秀吉と政宗。
「それからさえり」
「えっ」
軍議に同席していたさえりは急に名前を呼ばれ驚いた。
「織田家ゆかりの姫として同席しろ」
「わかりました」
光秀さんに逢えるかもしれない。そう思ったさえりは即答していた。
信長は少し驚き
秀吉は怪訝な顔をし
三成は首を傾げ
政宗はニヤリと笑い
家康はため息をついた。
「あんた、それなりに危険だってわかってる?」
「でも家康が守ってくれるでしょう?」
さえりの思わぬ一言に、家康は言葉を詰らせる。信長がふっと笑った。
「家康の負けだな。しっかり守ってこい」
「わかりましたよ」
しぶしぶ家康は承諾した。