第10章 暗中飛躍
意気投合した黒陽は毎晩宴会を開き、光秀をもてなしていた。
「ささ、明智殿、もう一杯」
杯に酒がなみなみと注がれる。
「よいおなごも居りますよ? 用意致しましょうか」
黒陽はへへへと下品に笑う。
女を抱けばさえりの事を忘れられるだろうか
「いや……」
光秀は軽く息を吐く。
「今宵は止めておきましょう。黒陽殿とまだ語り足りない」
「左様でございますか」
黒陽は揉み手で近寄ってきた。
「明智殿、ひとつ策があるのですが」
「どのような?」
「明智殿とお近づきになれた事ですし、信長を親睦と言う名目で招待し、討ってしまうのです」
光秀は驚いた。なんと安易な策か。むしろ策と呼べるのか。
「さすが黒陽殿。よい策ですな」
驚きなど微塵も見せず、光秀は答えた。
「ならば、密約を」
二人は密書を取り交わす。それは謀反の明らかな証拠となり得るものだった。