第9章 齟齬
「謀反を企んでいる不届き者が居るようです」
軍議で三成が発言した。
「なんだと!? 何処のどいつだその身の程知らずな野郎は!」
興奮して秀吉が立ち上がる。
「落ち着け秀吉。話がすすまん」
「はっ、申し訳ありません。信長様。ですが、落ち着いてはいられません」
秀吉は信長に諭され座るものの、興奮状態だ。
「続けろ、三成」
聞けば小国の大名が謀反を企んでいるという噂があるものの、証拠がないという話だった。
「ほう……それは俺にうってつけの仕事だな」
光秀の言葉に周りも頷く。
「ではこの件は光秀に任せる」
信長の一言で軍議は解散となった。
「おい光秀。抜かるなよ。あと、裏切るなよ」
秀吉が厳しい表情で光秀に近づいてきた。
「ほう、相手方に付けと? その発想はなかったな。考えておこう」
「光秀、てめぇ!」
掴みかかりそうになった秀吉を慌てて周りが止める。
「秀吉、興奮しすぎだ。光秀も茶化すな」
「準備があるので失礼する」
羽交い締めにされている秀吉を尻目に、光秀は広間を後にした。