• テキストサイズ

きつねづき

第8章 熱に浮かされ


光秀はいつものようにさえりの首筋に唇を這わせ、印を付けようとして違和感を感じた。

熱い?

「さえり、お前、熱があるんじゃないのか」

「えっ、そうですか?」

ぼんやりとした声で答えるさえりに、光秀はため息をついた。

「家康を呼んできてもらうから、お前は寝ていろ」

従者に家康を呼ぶように指示を出し、光秀は水を持ってくる。さえりはハアハアと浅い息を繰り返していた。

「熱が上がってきているな……」

光秀は心配そうに呟いた。







「さえりが倒れたって?」

家康は直ぐに来た。

「ああ、頼む」

暫く診察した後、家康は持っていた薬草を調合し、粉薬を作った。

「おそらく風邪ですね。ただ熱が高いんで、この熱冷ましを湯に溶かして飲ませて下さい。後、冷えないように汗も拭いて下さい」

「わかった。悪かったな、急に呼び出して」

「いえ。……じゃ、俺はこれで」

家康は少し何か言いたそうだったが、黙って帰っていった。

さえりに付けた首筋の印を見られたか
まあ仕方がない

光秀は寝ているさえりに問いかけた。

「無理をさせているか?」

荒い息づかいだけが返ってくる。

「さえり、薬だ。飲めるか」

さえりを抱き起こし、薬を入れた湯飲みを、唇にあてがう。

「ん……」

さえりは少し反応したものの、起きる気配はない。

「やれやれ……、一応、律していたんだがな」

ゆっくりと息をつく。

「不可抗力だ。許せ」

光秀は薬を口に含むと、さえりに顔を近づけ直接飲ませていった。

/ 62ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp