第4章 月と痕
「まだイく許可は出していないはずだが」
「ご、ごめんなさい。光秀様……」
乱れたままの姿で落ち込むさえりは滑稽で、妙に可愛いらしかった。
「まあ良い、次はお仕置きだな」
「えっ」
さえりは驚いて目を見開く。
「当たり前だろう。命令を守れなかったのだからな」
光秀はさえりの蜜壺から指を引き抜いた。と同時にさえりからはぁっと吐息が漏れる。
「さえりの愛液で、手がベタベタだ」
さえりの目の前に手を持ってくると、さえりは恥ずかしそうに目を反らした。
「舐めて綺麗にしろ」
「はい……」
さえりはゆっくりと顔を近づけ、自分の匂いに眉をひそめながらも、光秀の指を一本、口に含んで丁寧に舐め始める。
「美味いか?」
さえりは光秀の指を口に含んだまま、コクりと頷いた。美味い筈などない事はわかっているが、従順さがそうさせる。
「お前の痴態は、俺と……月だけが見ているな」
さえりはさっと頬を赤らめた。
指、手のひら、甲とすべて舐め終わると、さえりが確認してきた。
「終わりました。大丈夫ですか?」
光秀は自分の手をかざして確認する。指の間からさえりの不安そうな顔が見えた。
「良いだろう」
ほっと息をついたさえりの着物を光秀は整えてやった。
「さて、帰るか」
二人は手を繋ぎ、丘を後にした。
「月が見られなくなっちゃいそうです……」
帰り道で、さえりはそう呟いていた。
翌朝、夜着から着替えようとした光秀は、肩に軽い痛みがあることに気がついた。
「あの小娘、おもいっきり噛んだな」
光秀は赤くなっている噛み痕に、そっと指を這わせた。