第9章 姉と弟
『ふあぁ~・・・・・』
「随分と眠そうだね姉さん」
朝早くからショボショボする目を擦り佐助がいる鍛錬所へと足を運ぶと
鍛錬をしていた佐助が手を止めて声をかけてきた
『・・・・・眠れるわけないでしょ』
安土から帰ってきていこう葉月は謙信の部屋で過ごしている
寝る時など同じ褥でがっちりと抱き締めて
まるでもう二度と逃がさないと言わんばかりの勢いで
おかげで葉月はここのところ寝不足なのだ
「まあ"郷に入っては郷に従え"って言うし」
あれは絶対しきたりじゃない!!と不満を口にした
「謙信のところが嫌なら俺のところへ来るかい?」
『嫌です!それなら佐助のところで・・・・・
そうだ、佐助部屋貸して!!』
「嫌です」
『なんでよ!』
「まだ死にたくないので」
『別に一緒に寝ろって言ってるんじゃないんだからいいでしょ!』
「拒否します」
『いいから夕方まで部屋を貸しなさい!!』
「断固拒否します」
「お~・・・・って何してんだ?」
無表情で木刀を持ったままの佐助と
怒り心頭に睨みつける葉月
幸村は状況が読めず傍らにいる信玄に目線を向けた
「姉弟げんかだな」
「はあっ!?」
幸村がもう一度姉弟に向き直るとそこには
にこやかな笑みをたたえた葉月の姿が
『勝負』
そう一言発した
「はっ??」
『勝負しましょうか』
間の抜けた顔で葉月を見る幸村をよそに続けた
「はい」
「おいお前ら何言ってんだ!?」
『ふふふ、いざ尋常に勝負!!?』