第8章 軍神と魔王
「ずいぶんと騒がしいな」
天守閣にいる信長と光秀のもとまで葉月の声が聞こえてきた
「ええ、あの様子では
自分が置かれている状況を忘れているでしょう」
「あ奴に見つかるのも時間の問題か・・・光秀」
「は」
「葉月と・・・・・軍神をここに連れて来い」
「御意」
「軍神がどのような顔をするのか愉しみだな」
信長は一人になった天守閣でニヤリと口角上げた
『信長さま!!』
光秀が出て行ってからさほど時間を置かずに
天守閣へと葉月が転がり込んできた
『わたしの・・・わたしの甘味!
食べちゃいました!?』
「第一声が食い物の事とは
葉月貴様はもう一度猫を被ったらどうだ?」
『え~嫌です
そんなことよりも信長様、わたしの甘味食べちゃいました?』
「甘味ならここにある」
傍らに置いてあった器を見せる様に持ち上げた
葉月が嬉しそうに手を伸ばしたが
信長はスッと器を葉月から遠ざけた
「誰がお前にやると言った?」
『え?』
「俺は"甘味ならある"と言っただけだ
葉月の物だとは言ってない」
『で、でも政宗が!!』
「作ったのは政宗だが材料はこの城にあったものだ
この城は俺の城、城にある物すべて俺の物
よってこの甘味も俺の物と言うわけだ」
『ええ!!』
葉月はガックリと項垂れその場に蹲った
「葉月よ、そんなに欲しいのか?」
葉月は涙目になってコクコク頷く
ふと、襖の外に気配を感じ取り信長はニヤリと笑みを浮かべ
甘味を一つ摘まみ上げた
ぱぁっと笑顔になった葉月は這ってにじり寄り
差し出した甘味をパクリとかぶりつき
最後にペロリと信長の指を舐め上げた
次の瞬間勢いよく襖が開いた
「・・・・・なにをしている」
スパァーンと勢い良く開いた襖の先から
地を這うような低い声が聞こえてきた
葉月が振り向き見た人物は
綺麗なオッドアイの瞳を持った謙信だった