第7章 秘密と軍神
「城下町へ行ってくる」
そう言い残しいそいそと部屋を出ていく信玄
以前から城下町に行っていたが
前にもましてよく城下町へと向かう
それに呼応してか佐助も幸村を伴って出かける姿を見かける
「兼続」
信玄が出ていき代わりに部屋に入ってきた
直江兼続に葉月はどうしているかと問いかけた
「姫君なら先ほど信玄様と二人で城下町に行かれました」
「二人で・・・・・」
兼続の言葉にピクリと反応し無意識に言葉を繰り返した
「はい。先日は佐助殿や幸村殿ともお出掛けになられて
楽しかったと仰っていました」
気に入ってもらってよかったですと
嬉しそうに話す兼続の声は謙信の耳を素通りした
「紅葉狩りだと?」
その日の夕餉の席で信玄が急に切り出した話に
いつもに増して不機嫌な顔で聞き返した
「綺麗に色づいてきただろ?」
「下らん勝手にしろ」
葉が色づいただけなのに何故好き好んでそんなものを
見に行かねばならぬのかと信玄の話に
聞く耳を持たず徳利から酒を注ぎあおった
『謙信さまはお仕事なのですか?
残念です・・・・』
シュンと項垂れる葉月を見て
紅葉狩りの提案者が葉月だと分かった
「なら、天女と二人で出掛けるか」
「二人?」
信玄の発言にいつもなら聞き流す様な言葉を
またもや繰り返して聞き返した
『佐助も幸村もいないの?』
「おれは安土に視察に」
「俺も佐助と同行」
「謙信お前は来ないんだろ
天女と二人楽しみだな」
無言で酒を煽っている間に信玄が好き勝手を言い
二人で行くとニヤニヤ笑いかけてくる
いつもならば好きにしろと言い捨てるところを
葉月を信玄と二人っきりにしたくない
それに葉月は人質なのだから見張るだけだ
と紅葉狩りに付き合う事にした