第7章 秘密と軍神
「何時まで握っている」
大事そうに葉月の手を掴んでいる信玄の手を
叩き落とし葉月の腕を掴んだ
「この女は俺の馬に乗せる」
「お前自らそんなことしなくても
天女は俺の馬に乗せてあげよう」
「貴様になど任せられるか
この女は人質だ俺が連れていく」
跨がり葉月を引き上げ
自分の前に座らせ腰を抱き寄せ馬を走らせた
『きゃ!』
「落ちたくなくなければ掴まっていろ」
そう言えば遠慮がちに背中に腕を回し着物を掴む
葉月の腰に回した腕に思わず力がこもった
後ろから困惑した声と愉しそうな声が聞こえたが
それには触れずに馬を走らせた
馬で走りはじめ数刻
腕の中にいる葉月が
ぷるぷる震えている事に気づいた
"馬を休ませる"と言い小さい湖で休憩をとることにした
小さな湖で馬たちに水を与えていると
葉月が少し離れた所で足袋を脱ぎ
着物の裾をたくし上げ湖に足を浸したいた
「お前なにやってんだ!」
『なにって水浴びだけど・・・邪魔だった?』
「本物の天女の様だな~
な、謙信」
ニヤニヤと笑う信玄に
謙信はピクリと眉を動かして葉月を見た
「行くぞ来い」
「謙信、俺が天女を乗せよう」
「くどいぞ信玄」
戯れ言を言う信玄を無視し
謙信は葉月を乗せて
越後へと向けて走り出した
日が沈みかけた頃に漸く越後に到着した
城下町を通りすぎ謙信が住む春日山城へと
続く登り坂を進んでいく
「おかえりなさいませ謙信」
「佐助は戻っているか」
「はい。お部屋にいます」
それを聞き佐助の部屋へと歩き出した