第6章 春日山城
馬で走りはじめ数刻
謙信との近すぎる距離に緊張して
力を込め過ぎ腕がぷるぷる震える
う、腕が痺れた・・・
信玄さまと馬に乗っていた時は
気にならなかったけど
謙信さまと密着して乗るのは恥ずかしい・・・・
「・・・・・」
「どうした謙信」
急に馬の走る速度を落とした謙信に
信玄が声をかけると
"馬を休ませる"と返事が返ってきた
ちょうど目の前に小さい湖が見え
そこで休憩をとることになった
葉月は小さな湖で馬たちに
水を与えている所から少し離れた所で
足袋を脱ぎ着物の裾をたくし上げ湖に足を浸した
『気持ちいい~』
秋になり朝夕はすずしくなったが
まだ日中は暑いくらいだ
「お前なにやってんだ!」
『なにって水浴びだけど・・・邪魔だった?』
「本物の天女の様だな~
な、謙信」
にこやか信玄が謙信に笑いかけると
謙信はピクリと眉を動かして葉月を見た
「行くぞ来い」
「謙信、俺が天女を乗せよう」
「くどいぞ信玄」
馬に水を与え終えまた謙信の馬に乗せてもらった
越後へと向けて走り出した
日が沈みかけた頃に漸く越後に到着した
城下町を通りすぎ謙信が住む春日山城へと
続く登り坂を進んでいく
「おかえりなさいませ謙信」
「佐助は戻っているか」
「はい。お部屋にいます」
それを聞いて謙信はすたすたと歩いていった
「あれ佐助の所に行ったな」
『謙信さまと佐助は仲が良いんだ』
「違う事もないが・・・」
「あの・・・・信玄様」
幸村と話していると出迎えてくれた人が
チラチラと葉月を見て信玄に視線で問いかけた
「その話はあとでな
広間に案内しよう」
『はい。よろしくお願い致します』