第5章 身代わりの姫君
自室に帰ると待ち構えていた女中に
着ていた着物を剥ぎ取られ"信長様からです"と
新たな着物に着替えさせられた
『葉月です』
広間につき声をかけると
"入れ"と中から返ってきた
「遅かったな葉月」
「やっと来たか
主役がいないと始められねえだろ」
「葉月、お前の席はここだ」
『えっ?』
信長が"ここだ"と言ったのは
上座の信長の隣の席
おずおずと言われた通りに横に座ると
政宗が立ち上がり厨に向かった
暫くすると女中を引き連れ食事を運んできた
「今宵は葉月の為の宴だ
ぞんぶんに楽しめ」
信長の言葉を合図に宴が始まった
『ん~相変わらず政宗の料理は美味しい~』
「そうだろそうだろ
遠慮せずもっと食えよ」
「葉月、これを飲んでみろ」
『これってワイン?
へ~この時代にもあるんだ!!』
口にふくむと懐かしい味が口に広がった
「ほう貴様もこれを知っているのか」
『"も"ってことは椿も飲んだの?』
「うん。信長様に飲ませて貰ったよ」
『美味し~ねこのワイン!』
「葉月はいける口だな
こっちも飲んでみろ」
コクコクと飲んでいるといつの間にか
横に来た光秀がスッとお猪口を差し出した
『これは果樹酒?』
「そうだ」
『甘くて美味しい』
「飲ませすぎだ光秀!」
葉月が持っていたお猪口を秀吉が横から奪った
「やれやれ、秀吉のお節介が発揮されたか」
秀吉に睨まれても飄々として自分の席に戻って行った
その数分後に光秀の席の横にいた政宗がぱったりと倒れた
「・・・光秀さんまた政宗さんにお酒飲ませたんですか?」
「相変わらす弱いな
さて、俺はそろそろ下がらせてもらう」
クククと笑い酒を煽り席を立った
政宗が昏倒し光秀が席を立ったことで
宴はお開きになった