第5章 身代わりの姫君
「葉月様、信長様がお呼びです」
安土城にきて一月が過ぎたころ
信長から天守閣へ呼び出しがあった
「久方ぶりだな葉月
息災であったか?」
『はい』
天守閣には南蛮の商品が部屋を飾り華やいでいた
部屋に入ると城下町を眺めながら
酒を飲んでいた信長に
近くに来るように言われ歩み寄った
『わぁ凄い!』
「当分見ることは出来ぬからな
しっかりと見て目に焼き付けておくがいい」
『・・・・・越後へ行くのですね』
「明日の朝
越後より迎えの使者が来る」
『あの・・・
わたし着物などほとんど持っていません』
「心配無用だ
貴様の身の回りの物は此方で用意してある
足りないものは向こうで調達すればいい」
『はい。分かりました』
酒を飲む信長の横で暫くの間
城下町を見下ろし天守閣を後にした
「葉月様お出掛けになるのですか?」
門から外に出ようとしていると後ろから
困ったように微笑む三成と険しい顔の秀吉が立っていた
「もうすぐ日が暮れる
女の一人歩きは危ないぞ明日にしろ」
『秀吉さんも知ってると思うけど
わたし明日にはここを立たなくちゃいけないから
どうしても今日でかけたいんだよね』
「しょうがないじゃあ、三成と一緒に・・・」
『嫌です』
「は?何故だ」
『嫌い・・・いえ、忙しいでしょ?』
「私のことを心配してくださるのですか?
葉月様はお優しいですね」
『そんなこと一言も言ってない!
そう言う天然なところが嫌!!』
「お前な~家康みたいなこと言うな!」
「なんですか秀吉さん
あと邪魔なので退いて下さい」
城にやって来た家康が不機嫌を隠すことなく顔に出した
「丁度いい家康
お前葉月と一緒に城下に行って来い」
「は?なんで俺が・・・」
「では私と三人で・・・」
「黙れ三成
お前と行くくらいなら葉月と二人の方がまし」
『三成くんはいらない!家康さんと二人がいい!!』
決まりだなと秀吉に言われ家康は小さく溜息を吐き
葉月を連れて来た道を引き返していった
「よくやった三成」
「?ありがとうございます秀吉様」