第5章 身代わりの姫君
「いらっしゃいお嬢さん」
もしかしたらまた会えるかも、と
あの日以来店に通い常連になった
「今日は来てますよ」
『!!ありがとうございます』
店主が小声で教えてくれて
奥の席に視線を送れば静かに一人で
お酒を傾けている男性を見つけた
男性が見える位置の席に着き
葉月も同じお酒を頼んだ
『うわ~アルコール強い
こんなの呑んでてよく酔わないな~』
ちびちびと舐める様にゆっくりと飲む
徳利一本を小一時間かけて飲み干して席を立った
「店主」
「はいなんでしょうか?」
「先ほどの女はよく来るのか?」
葉月が店を出て行って間もなく
謙信は代金を払い店主に声をかけた
「ええ、この間の騒ぎの日から
毎日お見えですよ」
「そうか」
道に出て葉月が去って行った先に
目を送るがそこにいるはずもない
視線の先には信長が居る安土城
「謙信なにをしてるんだ?」
「・・・・信玄、お前こそ何をしている?」
安土城を睨むように見ていると
歩いて来た信玄が後ろから声をかけてきた
「俺の天女を捜してる」
「貴様が連れて来たと言う小娘か
女の尻を追う暇があれば鍛錬の一つでもしろ」
冷たく言い放ち隠れ家へと帰って行った
「やれやれ、謙信の女嫌いも困ったものだな」
「アンタの女好きの方が困ったもんですよ!!」
あと甘味もほどほどにしてくださいよ!と
声を大にして叫び幸村だった