第3章 魔王信長の策略
「謙信・・・今なんて言った?」
「織田信長と休戦協定を結んだ」
「はあああ!!」
安土城下に潜伏していたおれが一足先に帰り
謙信様に告げられた言葉
あれほど目の敵にしていた信長公との休戦協定に驚きはしたが
現代人のおれとしては戦が無くなりホッとした
数日違いで春日山城に信玄様、幸村は帰って来て
広間で一人酒を飲んでいた謙信様が発した言葉に瞠目した
「どういう事だ佐助」
「さあ、おれにもよくわかりません」
表情一つ変えずに上座で酒を飲んでいた謙信が
すっと立ち上がりぎろりと幸村を睨んだ
謙信の手には姫鶴一文字が握られている
「まあ頑張れ幸」
「幸村なら大丈夫。骨は拾うよ」
「何で俺だけこんなめにー!!」
信玄にぽんと肩を叩かれた幸村は
素早く立ち上がり脱兎のごとく走り出した
その後ろを謙信は抜き身の
刀を持って追いかけていった
「それで謙信の条件は?」
静かになった広間で信玄は佐助に向き直った
「信長公はこちらに一人
休戦協定の人質を送るそうです」
「どうせなら男より
可愛い姫が良いんだがな」
「信玄様ならそう言うと思いました」
広間で話していると遠くの方から
幸村の叫び声が聞こえてきた
今日も春日山城は平和だなと佐助は思った