第3章 魔王信長の策略
「葉月様はのみ込みが早いですね」
ああもう!何故こうなった!!
光秀に連れて来られてすでに十日
翌朝起きてからまた豪華な着物を着せられた
文字の読み書きや詩、果ては歩き方まで一から叩き込まれた
そして今はお琴の練習中なのだ
慣れない正座で長時間お琴を弾き
脚が徐々に痺れてきて笑顔が引き攣る
常に笑顔を心掛けている葉月だが
流石に限界がやって来た
昼餉を食べたあとお休みを貰い庭を散策する許可を貰った
着替えることは出来なかったので重い着物のままで歩く
ゆっくりと庭を歩く姿は遠めに見れば一国の姫にも見える
『着物は重いし脚は痺れるし・・・・はあ~』
ジャリッと砂利を踏む音に振り向くと
片目に眼帯を付けた男性が好奇心の満ちた青い瞳で見ていた
「庭に人影が見えたから来てみりゃ
良い女がいるじゃねえか
お前が光秀が囲ってるって噂になってる女か?」
『あっ思い出した!
以前に甘味やにお茶を飲みによられた方だ!!』
「は??」
にこにこと笑って名前を名乗りあっていると
政宗の後ろから光秀がやって来た
「思ったよりも嗅ぎつけるのが遅かったな政宗」
「もっと早く来たかったんだが
仕事を終わらせてからじゃねえと
秀吉がうるせえからな
それにしてもあの時にあった甘味やの娘とはな」
庭から部屋に移動し女中が淹れてくれたお茶で
政宗が持ってきた饅頭を食べ始める
久しぶりの甘味に顔が綻ぶ
『ん~美味しい~』
「そうか?そりゃあ良かった
また作ってきてやるよ」
『これ政宗さんが作ったの!』
「政宗でいい」
『ありがとう政宗』
お茶をしていると女中が呼びに来て政宗とここで別れた
また作って来るからなと言って帰って行った