第3章 魔王信長の策略
秀吉さんの後殿から連れられて来たのは
光秀さんの後殿だった
光秀さんが女中になにやら指示を出し
わたしは女中に湯浴みに連れて行かれた
その後、美しい着物を着付けられ
光秀の待つ部屋に通された
「見違えたな葉月」
『あ、ありがとうございます
あの・・・それで、仕事と言うのは?』
「まあそう焦るな
まずは夕餉を食べろ
話はその後だ」
『いただきます』
膳の前で手を合わせて食べ始めた
静かな部屋にわたしの咀嚼の音だけ
光秀さんは箸に手を付けず
じっとわたしを見ていた
『なんですか?』
「いや、なんでもない」
そう言ってお椀を手に取り
光秀さんも食事を始めた
『えぇ!!なにしてるんですか光秀さん!』
光秀さんの食事の仕方に驚き思わず声をあげた
持ち上げたお椀の中に全てを放り込み
かき混ぜて食べ始めた
「腹に入れば同じだろ」
『そう言う問題じゃないです!
それぞれの味をちゃんと
味わって食べてください!!』
「お前も政宗の様なことを言うのだな」
『政宗って方が誰なのか知りませんけど
誰だってそう言うと思います』
「いずれ会う事になるだろう」
近いうちになと
意味深な言葉を最後に
二人とも無言で食事を終えた
「葉月、お前の部屋は用意してある
今日はゆっくり休むといい明日から忙しくなるからな」
まだ仕事があると言う光秀さんに
就寝の挨拶をして女中さんに
部屋に案内してもらい眠りについた
葉月が眠りについて暫くすると光秀は夜の闇に紛れ
安土城天守にいる信長のもとへと向かった
「光秀か」
部屋の前に着くと中から信長の声をかけてきた
返事をして中に入ると脇息に肘を置きお酒を飲んでいた
「面白い者が手に入りましたので報告を」
「ひと月だ、良いな光秀」
「はい。お任せください」