第2章 安土城下
『三成様・・・かわりましょうか?』
「大丈夫です葉月様
それと私のことは"三成"とお呼びください」
『呼び捨てはちょっと・・・
"三成くん"でいいですか?』
なんでこんなことになったのかと
大体ただの町娘のわたしに
"様"付けなんてしなくてもいいのに・・・・・
連れられるまま秀吉の御殿にやって来てしまった
秀吉は後殿に帰るなり仕事があるからと部屋に籠り
三成が葉月のそばについてくれているのだが・・・
「すぐに」
『あっ』
カシャン
「お茶を」
パラパラ
『ちょっ!』
「お入れ」
バシャッ
「可笑しいですね?」
何でこうなったのかと
小首を傾げ不思議そうにする三成を見て
頬がピクピクと引きつった
『可笑しいのは三成くんでしょう!
茶葉を入れてお湯を注ぐだけの作業なのに
一体何がどうしてこうなるのよ!!
わたしが淹れるからなにもしないで!!!』
この人はダメだこれでは何時までたっても
お茶を飲むことはできないと
三成の手元から茶葉や湯呑みを取り上げた
『すみませーん
掃除道具を貸してくださーい!』
大きな声で叫べば女中が
慌てて部屋に飛び込んできた
「私もお手伝いを・・・・」
『三成くんはこれ持って
ここで大人しくしてて!!』
取り上げた茶器を再び三成の手に渡し
部屋の隅に追いやった
女中と二人でテキパキと三成が溢した
茶葉やお湯を拭き取っていく
濡れた手拭きを女中に渡し
三成から茶器を受け取り座布団に座らせ
湯呑みに茶葉を入れ茶筅でお茶を立てた
『はい。どうぞ』
「素晴らしいです葉月様!」
『普通お茶ぐらい誰でも
淹れれるはずなんだけど・・・』
「三成・・・・・おまえ何やってるんだ?」
呆れながら呟いていると
いつの間にかやって来た秀吉が
入り口で頭を抱えていた
「秀吉様!葉月様は
姫君かもしれません!!」
「馬鹿じゃないの?
そのぐらい誰でも出来る」
秀吉とは違う男性が聞こえてきた
秀吉の後ろに目線を向けると
蜂蜜色の髪に翡翠色の瞳をした男性が
本を持って立っていた