第2章 安土城下
城から御殿へと三成を連れて歩いていると
前方に座り込んでいる娘を発見した
「秀吉様?」
いきなり歩を止めた俺に
後ろを歩いていた三成が声をかけてきた
俺の視線を追いかけ前方の彼女を視界に入れる
「女性の様ですが
どうされたのでしょう?」
小首を傾げて俺に問いかけてくるが
そんなこと俺が知る由もない
見たところどこかの御殿の女中ではないようだ
なぜこんなところで座り込んでいるのかと不審に思い
気配を消してゆっくりと彼女の背後に近づいて行った
『・・・・・寺・・・・・・生きて・・・・違うから
・・・・何処かに・・・・・ん?』
後ろまで来たところで彼女は
ぶつぶつと何かを呟きながら
地面に何か文字の様なものを
書いてることに気づいた
「そこで何をしている」
俺が声をかけると慌てたように文字の様なものを消し
ゆっくりとした動作で振り向いた
綺麗な濃い茶色の髪がさらさらと彼女の頬にかかり
その隙間から見える顔色はやや青白い
体調が悪いのかと心配になったが目線の端に
彼女が地面に書いた文字の一部を捉え険しい表情で見つめた
「秀吉様、顔色が悪い様ですし
御殿でお休みさせては上げてはいかがでしょうか?」
その言葉を聞くと彼女の顔色はさらに青白くなった
「そうだな、暫く俺の後殿で休んでいくといい」
最初は遠慮していた様だが三成に背を押され
諦めたようにゆっくりと歩き出した
御殿に着くまでの道のりで三成が彼女の名前を聞くと
"葉月です"と答えた
この間光秀が見ていたのも葉月で
椿がこの安土に来た日にあった
甘味やの娘も葉月だった
一度目は偶然、二度目は必然、三度目はなんだった?
そんなことを考えながら御殿につき
三成に葉月を面倒を頼み仕事部屋に籠った