第2章 安土城下
安土にきて十日
椿の足取りは掴めずに
時間だけが過ぎていく
これ以上信さんや幸に迷惑はかけれないと
葉月は職探しを始めた
取り敢えずここ半年で叩き込まれた
甘味作りを生かそうと
甘味やにむかったが
人では足りていると断られた
ならばお食事処で洗い物でもと
訪ねるもこちらも断られた
飲食関係のしごとがよかったが
選り好み出来る立場ではない
兎に角雇ってもらえる店を見つけねばと
大通りに並ぶ店に雇ってもらえないかと聞き回った
しかしそうそう簡単には見つかるはずもなく
すべての店から断られてしまった
『はぁ・・・』
大通りを俯きとぼとぼと歩いて行く
いつの間にか城下を抜け武家屋敷が並ぶ
『そう言えばこの辺りは
まだ歩いたことなかったっけ・・・』
辿り着いた次いでだからと
椿の捜索をすることにした
『わたしが女将さんに拾われたみたいに
椿も誰かに拾われてるかも・・・・・
あれ?ちょっと待って椿と一緒に居た人
政宗って呼ばれてたなかった?』
政宗と言う名前に眼帯とくれば
思い当たるのは奥州筆頭の独眼竜伊達政宗
『ええ!あれが伊達政宗だったら
一緒に居た秀吉ってまさか・・・!!』
"豊臣秀吉"と言う名前が頭に浮かんだ
『イヤイヤイヤ!あり得ないあり得ない!!』
ぶんぶんと頭を振って必死に頭の中を整理する
道の真ん中で座り込み地面に指で文字を書く
『本能寺の変の後って・・・
ん?そう言えば信長って生きてるし
わたしが知ってる歴史と違うから
伊達政宗と豊臣秀吉が一緒にいても可笑しくないのかな?
それじゃ明智光秀も何処かに・・・・・ん?』
文字を書いていた手元に影が落ちて来た
「そこで何をしている」
考え事に没頭するあまり人の気配に気づかなかった
見られて不味いものではないが
急いで手元の文字を消しゆっくりと後ろを振り向いた
わたしの視線の先にいたのは
微笑めば優しい印象を与えるであろうタレ目の男性
今は険しい表情でわたしの指先を見つていた
「秀吉様、顔色が悪い様ですし
御殿でお休みさせては上げてはいかがでしょうか?」
青ざめるわたしに秀吉の後ろにいた人から追い打ちがかり
そのまま秀吉に御殿へと連れていかれることになった