Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第7章 ホームズと、ワトソン?【工藤新一】
そして来たる放課後。
ホームルームが終わる時間は同じ筈なのに、帰る支度を整えた頃には既に工藤先輩は私の教室まで来ていて。廊下にいる彼が、こっちに向かって手を上げてくる。
あー・・・また目立つことを・・・
皆にジロジロ見られている気がしてたまらない。
友達にだけ挨拶をし、後はなるべく誰の顔も見ないようにして、廊下へ出て。先輩と一緒に校舎を出た。
今日も私は探偵の助手の仕事をするんだろうか。
「はどっか行きてーとこあるか?」
「えっ?先輩の家に行くんじゃないんですか?」
「ウチがいいならそれでもいいけどよ・・・ほら、カフェとか、女は好きなんじゃねーのか?」
「カフェで事件でもあるんですか?」
「だからだなー・・・今日は探偵と助手じゃなくて・・・まあ昨日のお礼だ。好きなモン食わしてやるよ」
「やったー!それならー・・・でもあんまり混んでない所がいいかな・・・」
(もう今日はあまり人目に付きたくないのだ)
「だったらー・・・」とやってきたのは先輩がたまに行くんだという喫茶ポアロ。
高校生の客は私達だけ。ガヤガヤしてなくて、居心地はいいかも。
ホームズの話をしながらアイスコーヒーを飲む先輩を前に、私は美味しいケーキとジュースを頂く。
男の子と学校から二人で帰るのも初めてだし、お茶するのも初めてだなぁ・・・
ホームズの話に始まり、工藤邸には世界中の推理小説がある話、先輩はあんな家に今は一人暮らしだから家事が大変な話・・・
今まで知らなかった先輩の話もたっぷり聞けて、私的には大満足。
日が暮れかけるまでのんびり過ごして、また家まで手を繋ぎながら送ってもらい・・・別れ際、今日は唇にキスをされた。
次の日からも結構な頻度で放課後を二人で過ごし、休みの日は先輩の家を掃除したり、勉強を教えてもらったり、また郵便物の整理をしたりして・・・
いつの間にか四月も終わりに近付いてきた。
先輩と二人でいることにはだいぶ慣れてきたと思う。
でも、目が合って“キスされるかも”って思った瞬間から、唇が触れ合って、離れて、しばらくの間は心臓がバクバクで・・・これには中々慣れない。
もうすぐ、ゴールデンウィーク。学校は連休になる。
そして連休中の五月四日は、工藤先輩の誕生日だ・・・