Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第7章 ホームズと、ワトソン?【工藤新一】
先輩の顔を見上げて、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
彼が照れたような顔をしてるから・・・こっちまで益々恥ずかしくなってくる。
「俺はが好きだ、お前も・・・そうなんだろ?だからその、俺とは・・・彼氏と、彼女ってことだ、いいな?」
「・・・はいっ」
彼氏と彼女・・・
とてつもなくドキドキしているのに、口元が緩んでくる。
どんな顔をしたらいいか分からない。
先輩がふわっと頭を撫でてきて。肩の辺りに手を置かれ。
もしかして、と思った時にはまた目の前に先輩の顔が近付いてきていた。反射的に目を閉じて、そのもしかしてを受け入れようとする・・・
でも、どうも「おおお!」とか、「押すな押すな!」だとか・・・明らかに近くから、小声だけれども騒いでいるような声が聞こえて。
パチっと目を開ければ、先輩の顔も、もう違う所を向いている。階段のすぐ上に、誰かいる。
「オメェらそこで何してんだよ・・・」
「あーバレたか・・・ナニって?そりゃー、俺達は工藤との恋の行く末を影から見守ってだな」
中道先輩達が顔を出したのだった。・・・危なかった。
でも・・・もしかして色々聞かれてたのかもと思うと・・・もうこの場に居るのも恥ずかしくて。先輩の後ろに隠れる。
「は見せもんじゃねーぞ」
「こんな誰が来るかも分かんねぇ場所で何かしようとしてたのは誰だろーな?」
「るせーな・・・、悪い、もう教室戻れ。終わったら迎えに行くから」
「は、はい・・・」
「おっ!放課後はデートか?帰宅部はいーよなー!」
ガヤガヤ騒ぎ出す先輩達に素早く会釈だけして、校舎の中へ逃げるように戻った。
やっと落ち着けるかと思いきや、こっちもこっちで大変な事になってたようで・・・
「工藤新一くんと付き合ってるの!?」「いつから!?」「さっきそこでキスした!?」とか・・・次々に色んな女の子から質問攻めに合う羽目になる。
今までの人生の中で、今が一番人に注目されている気がする・・・こういうのは得意じゃない。
どんどん身体が縮こまって無くなってしまいそうになった頃、午後の始業のチャイムが鳴り、やっと開放された。
授業が始まってよかった、なんて思ったのはおそらく初めてだ。